山形県鶴岡市 2016年 起業 稲川 琢磨
株式会社WAKAZE代表取締役社長
PROFILE

1988年生まれ。慶應義塾大学理工学研究科修士課程修了。前職ではボストン・コンサルティング・グループ(BCG)で経営戦略コンサルタントを勤めた。BCG在籍中に父親と一緒に呑んだ日本酒の美味しさに衝撃を受け、ファブレス(委託)日本酒メーカーWAKAZE起業。

毎年数十軒の酒蔵が廃業している日本酒業界で、山形県鶴岡市でゼロから自社ブランドを立ち上げ、商品を海外展開している日本酒メーカー「WAKAZE」。代表の稲川琢磨さん(29)は東京の大手外資系コンサルを経て東京で起業したのち、縁もゆかりもなかった鶴岡に移住、本社も鶴岡に移転した。「鶴岡に来たことが、僕の今までの経営で一番正しかったこと」と話す稲川さんの話から、地方での成功の秘訣を探った。

地方でこそ花開いた情熱

WAKAZE代表取締役社長の稲川琢磨さんは、慶應義塾大学で流体力学を専攻。フランス・パリへの留学もあり、前職はボストン・コンサルティング・グループ(BCG)の経営戦略コンサルタントという、華々しいキャリアを持つ。そんな稲川さんは「鶴岡に来たことが、僕の今までの経営で一番正しかったことだと思います」と、確信を込めて語る。

酒蔵を持たない「ファブレス」日本酒メーカーとして、稲川さんが2016年に東京・青山で創業した「WAKAZE」。「日本酒ベンチャー」として注目を集め、今では国内のほか、フランス、香港、シンガポール、タイの海外4カ国にも商品を展開している。

 

順風満帆に見えるWAKAZEも、起業当初は苦しんだ。他の日本酒メーカーの商品との差別化に悩み、東京の起業家や投資家にアドバイスを求めても、突破口になるようなものは得られなかった。「ものづくりに100%コミットしている感じがなかった。投資家とか偉そうなおじさんとか、ベンチャー界隈の人たちと一緒にいても何も生まれない。そこで色んな人に話を聞いても解決に至らないなら、もう酒どころ、米どころに行こうと」

思い悩んでいたときに出会ったのが、鶴岡という土地だった。「たまたま鶴岡に行くことがあって、地元の人と話したら、鶴岡熱い!負けられない、と。食文化も豊かだし、出会いから速攻移転と移住を決めました」。

東京の青山にあった本社を山形県鶴岡市に移転し、稲川さん自身も鶴岡に移住。それがビジネスの成功への大きな転機だったという。

「東京だと競合も激しくて、埋もれちゃうところもありますが、鶴岡だといろんな人に応援してもらえる。目立てるというのがありますね。メディアも取り上げやすいし、金融機関からもサポートしてもらえる。販路の面もサポートしてもらえて、酒蔵さんにもサポートしてもらえて。こんないい環境はないなというのが、これまで1年半やってみての感想ですね」

鶴岡で「丸裸にされ」乗り越えた「机上の空論」

しかし、稲川さんもそう言えるようになるまでには当然苦労があったという。「縁のない土地で、最初は相当苦労しました。コネがなくて、酒蔵さん開拓でめちゃくちゃ断られ、相手にされませんでした。実績もないし」

「ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)出身と言っても、それってハンコ注射ですか?と返ってくるんですよ。鶴岡ではそんなことは何も評価されない。東京だったら一目置かれてドヤ顔できたところが、丸裸にされて一人の人間として状況を切り開いていかなければならなかった」

酒蔵の開拓ではまるで相手にされず、慣れない寒さに心も冷え切り、孤独にあえいだ時期が続いたという。つらい状況を打開するきっかけになったのは、地方という小さなコミュティだからこその人の縁だった。寂しさを紛らわすために通った日本酒バーのマスターに、地元の酒蔵を紹介してもらったのだ。その縁がなかったら今のようにやれていない、と稲川さんは振り返る。

ワイン市場に殴り込み!「100%革新」の日本酒

WAKAZEの商品コンセプトは、「洋食に合う日本酒」だ。酸味の薄い日本酒は洋食に合わず、和食との組み合わせに限定されてしまう。日本酒が海外で勝負するためには「世界のワイン市場をターゲットにし、洋食と合わせられるような日本酒を開発しなくてはならない」と、稲川さんは強調する。発想の原点は、稲川さんがフランスへの留学中、嗜好品分野での日本のものづくりの存在感の小ささを目の当たりにしたことだ。

「既存の酒蔵さんのマーケットと競合するのではなくて、新しいマーケットを生み出すことによって、日本酒の新しい価値を世の中に伝えたいと思っています」

 「ものづくり」の原点に立ち戻り、消費者を意識したメーカーを目指す

未知の事業領域や土地に飛び込み、新しい商品を生み出し、海外へ発信する。稲川さんを駆り立てるものは何なのか。「結局、儲かることをやるんじゃなくてパッションを持てることをやるべきだと僕は思います。続かないんで」

「今でも思い出すとうるっとするんですけど、僕たちのお酒を気に入ってご両親にも贈ってくれた方が言ってくれたんです。『このお酒を飲んで自分のことを思い出してもらえるのがすごく嬉しいんだ』と。自分が作ったものがこれだけ人の心に刺さるんだという、もう感動ですよね」

そして東北の地で同じように志を持ち起業しようとする人々に、こうエールを送る。

「アイデアを語ることに価値はない。行動することに価値があって、結局実力を残すには結果を残すしかない。逆に言うと、自分の思ったことを信じて突っ走ることしかできない。自分の心に耳を澄ますことが大事なのかなと思います」

PROFILE

1988年生まれ。慶應義塾大学理工学研究科修士課程修了。在学中にフランス政府の奨学金給費生として2年間パリのEcole Central Parisに留学。前職ではボストン・コンサルティング・グループ(BCG)で経営戦略コンサルタントを勤めた。

BCG在籍中に父親と一緒に呑んだ日本酒の美味しさに衝撃を受け、ファブレス(委託)日本酒メーカーWAKAZE起業。ものづくりにより近い環境を求めて、全く縁のなかった酒どころ山形県鶴岡市に会社を移し、自身も移住。フランス留学中に、国内日本酒メーカーの商品づくりが海外マーケットの需要に合っていない現状を目の当たりにしていた経験から、海外マーケットを意識した「洋食に合う日本酒」を開発する。

現在、WAKAZEの商品はフランス、香港、シンガポール、タイの世界4カ国で展開。今年からアメリカでの展開も開始する。

INTERVIEW他のインタビュー

  • ITで地元の地域課題を
    解決することが自分の使命
  • 地域に迎合するのではなく
    オリジナリティを保つ
  • 地方ではいざという時に頼れる人の数が違う。
  • 鶴岡に来たことが
    一番正しい経営判断だった

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